ジャズピアノのコードを7つの型で覚える|左手ボイシングが流れるようになる!

グランドピアノの鍵盤とアクション部分の内部構造
コード

ジャズピアノを始めると、コードネームの種類と押さえ方の多さに圧倒されがちです。

ただ、最初に必要なのは「全部の形」ではなく、頻出する型を少数に絞って体に入れることです。

コードの役割を理解しながら覚えると、暗記が減り、移調や耳コピにも強くなります。

この記事は、ジャズピアノのコードを弾くために必要な型、読み方、左手ボイシング、定番進行、コンピングの勘所を順番に整理します。

最後まで読む頃には、コードを「知っている」から「使える」へ移す練習の道筋が見えてきます。

ジャズピアノのコードを7つの型で覚える

グランドピアノを演奏する女性の手元と内部構造

ジャズの現場で頻出するコードは、見た目のバリエーションほど種類が多いわけではありません。

まずは7つの基本型を覚え、どのキーでも同じ考え方で組み立てられる状態を目指します。

ここでのポイントは、右手でメロディやテンションを載せる余白を残しつつ、左手で土台を崩さないことです。

メジャー7

メジャー7は、明るさの中に少しだけ切なさを含む響きで、曲の「落ち着きどころ」に置かれやすい型です。

まずはルート、3度、7度の関係を固定し、キーが変わっても同じ距離感で指が動くようにします。

左手は音数を増やさず、3度と7度を軸にして輪郭を出すと、右手の自由度が一気に上がります。

テンションは9や13のように素直な音から足すと、濁りにくく耳に馴染みます。

最初は「きれいに解決する」感覚を優先し、無理に難しい響きを追わないことが上達の近道です。

コード表記 Cmaj7
構成音 C–E–G–B
左手の基本形 3rd+7th中心
よく出る進行 Ⅱ-Ⅴ-ⅠのⅠ
相性の良いテンション 9/13

マイナー7

マイナー7は、柔らかい暗さを持つ基本形で、Ⅱ-Ⅴ-ⅠのⅡに置かれることが多い定番です。

まずは「短3度」と「短7度」を耳で区別できるようにすると、コードネームが読める速度が上がります。

左手はルートを省いても成立しやすく、3度と7度の2音だけでもジャズらしい雰囲気が出ます。

テンションは9や11を足すと広がりやすいので、右手で軽く添える感覚が向いています。

マイナー7を安定させると、スウィングでもバラードでも伴奏の土台が崩れにくくなります。

コード表記 Dm7
構成音 D–F–A–C
左手の基本形 3rd+7th中心
よく出る進行 Ⅱ-Ⅴ-ⅠのⅡ
相性の良いテンション 9/11

ドミナント7

ドミナント7は、緊張を作って次へ進ませる役割を持ち、ジャズらしさの中心にいる型です。

3度と7度が生む不安定さが核なので、左手はその2音の位置関係をまず固定します。

5度は省いても成立しやすく、テンションを入れる余地を作るためにも削る判断が有効です。

テンションは9、13から始め、慣れてきたら♭9や♯9などの色を少しずつ試すと安全です。

解決先のコードを想像しながら弾くと、ただの和音ではなく「流れ」を作れるようになります。

コード表記 G7
構成音 G–B–D–F
左手の基本形 3rd+7th中心
よく出る進行 Ⅱ-Ⅴ-ⅠのⅤ
相性の良いテンション 9/13

ハーフディミニッシュ

ハーフディミニッシュは、マイナーキーのⅡで出やすい型で、少し影のある緊張感を担当します。

ポイントは「♭5」の響きで、うっかり通常の5度を入れると別物に聞こえやすい点です。

左手は3度、♭5、♭7のどれを残すかで安定感が変わるので、まずは3度と♭7を軸にします。

テンションは♭9や11などを状況で選びますが、最初は音数を増やさず輪郭を保つ練習が先です。

マイナーのⅡ-Ⅴ-Ⅰが滑らかになると、ジャズの定番曲が一気に弾きやすくなります。

コード表記 Bm7♭5
構成音 B–D–F–A
左手の基本形 3rd+7th中心
よく出る進行 マイナーのⅡ
相性の良いテンション 11/♭9

ディミニッシュ

ディミニッシュは、短い経過和音や転調の接着剤として使われ、場面を一瞬で変える力があります。

構成音が対称的なので、形を覚えると同じ形をずらして使えるメリットが大きいです。

左手は音を詰め込みすぎると濁りやすいため、まずは3音や4音のコンパクトな形で扱います。

「どこへ解決するか」を決めてから置くと、意図がはっきりして伴奏が不自然になりません。

最初は曲の中で出る場所を限定し、響きを耳で覚えることを優先すると吸収が速いです。

コード表記 Cdim7
構成音 C–E♭–G♭–A
左手の基本形 4音をコンパクトに
よく出る進行 経過和音
相性の良いテンション テンション扱い少なめ

サス4

サス4は、3度を一時的に外して曖昧な緊張を作る型で、ドミナントの前処理として登場します。

3度を抜くことで濁りにくく、右手でメロディを守りながら伴奏を置きたい場面に強いです。

左手はルートと4度、♭7などで骨格を作り、解決先の3度を後から入れる動きが効果的です。

テンションは9や13を足しても破綻しにくいので、色を付ける練習にも向いています。

サス4の扱いが上手くなると、コード進行が同じでも雰囲気を変える選択肢が増えます。

コード表記 Gsus4
構成音 G–C–D–F
左手の基本形 4th+♭7中心
よく出る進行 Ⅴの前処理
相性の良いテンション 9/13

6/9

6/9は、メジャーの安定感を残しつつ、ポップス寄りの軽さも出せる便利な型です。

メジャー7が少し重く感じる場面で、6/9に置き換えるだけで空気が柔らかくなります。

左手はルートと3度、6度を中心にして、7度をあえて入れない設計が分かりやすい入口です。

テンションというより「響きのキャラクター」として扱うと、選ぶ理由が明確になります。

バラードやボサ、歌ものの伴奏で重宝するので、早い段階で手に馴染ませておくと武器になります。

コード表記 C6/9
構成音 C–E–G–A–D
左手の基本形 3rd+6th中心
よく出る進行 トニック代用
相性の良いテンション 9

コードネームを素早く読み替える

黒い椅子とアップライトピアノの鍵盤全体

ジャズピアノのコードは、押さえ方の前に「読み方」で詰まることが多いです。

記号の意味を機械的に分解できるようになると、初見の譜面でも落ち着いて伴奏できます。

ここでは、ルールを最小限にまとめて、迷うポイントを減らす読み替えのコツを整理します。

品質の判定

コードネームは、まずルートを見て、その次にメジャーかマイナーかを瞬時に判断するのが基本です。

m、maj、dim、susなどの記号は、音の距離を指定する合図だと捉えると混乱が減ります。

7が付くときは、和音が「次へ進む力」を持つことが多いので、進行の方向感を意識します。

読めない記号に出会ったら、全部を押さえようとせず、3度と7度で骨格を先に作ると破綻しにくいです。

読み方を固めるほど、左手の動きが滑らかになり、リズムの余裕が生まれます。

テンション表記

9、11、13は、基本の7thコードに色を足すための追加音として理解すると整理しやすいです。

テンションは全部を同時に入れるものではなく、メロディや編成に合わせて取捨選択します。

濁りやすい場面では、5度を省くか、テンションを1音だけに絞ると音像が整います。

特に13は「6度の高さにある追加音」という感覚を持つと、指の配置が決めやすくなります。

テンションは響きの趣味ではなく、流れと明るさを調整する道具だと考えると実戦で役立ちます。

表記 意味 目安
9 2度の追加 明るさ
11 4度の追加 広がり
13 6度の追加 軽さ
♭9 半音下 強い緊張
♯11 半音上 浮遊感

オンコード

スラッシュが付くオンコードは、右側の音がベース音を指定していると考えると迷いません。

ピアノがソロで弾く場合は、左手でベース音を明確にし、右手は上のコード感を崩さずに乗せます。

ベースがいる編成では、左手がベース音を重ねすぎないようにして、濁りを避ける判断が重要です。

オンコードは「転回形」だけではなく、ベースラインの意図を優先した表記として出てくることもあります。

場面ごとのルールを作っておくと、本番で迷う時間が減ります。

  • 右側をベース音として認識
  • 左手は低音を整理
  • 右手は3度と7度を優先
  • 濁るときは5度を省略
  • メロディ優先で取捨選択

省略の判断

ジャズピアノのコードは、全部の音を入れるより、必要な音を残すほうが結果的に濃く聞こえます。

特に3度と7度は機能を決める核なので、迷ったらこの2音を最優先に置くのが安全です。

5度は省略しても崩れにくく、テンションやメロディの居場所を作るための調整弁になります。

左手が詰まるとリズムが固くなるので、音数を減らしてタイム感を守るほうが音楽的です。

省略は手抜きではなく、アンサンブルのための設計だと捉えると選びやすくなります。

左手ボイシングの芯を作る

木製の床に置かれた黒いグランドピアノと椅子

ジャズピアノのコードを「それっぽく」聞かせる鍵は、左手のボイシングにあります。

左手が安定すると、右手はメロディ、装飾、アドリブに集中でき、音楽が立体的になります。

ここでは、最短距離で使える形から順に、芯になる考え方を組み立てていきます。

シェルボイシング

シェルボイシングは、コードの骨格を最小の音で表す考え方で、初心者の最初の武器になります。

ルート、3度、7度のうち、状況に応じて2音や3音に絞ることで、濁りを避けやすくなります。

形を少なく保てるので、移調練習でも指が迷いにくく、耳と手が同時に育ちます。

右手でテンションを足す余白ができるため、少ない音で豊かに聞かせる感覚が身につきます。

まずはⅡ-Ⅴ-Ⅰだけをシェルで回し、滑らかさが出るまで徹底すると効果が大きいです。

  • 核は3度と7度
  • 必要ならルートを追加
  • 5度は原則省略
  • 右手でテンションを担当
  • 移調は半音ずつ

ガイドトーン

ガイドトーンは、3度と7度を中心にした考え方で、コードの機能と解決感をはっきりさせます。

Ⅱ-Ⅴ-Ⅰでは、この2音が半音や全音で滑らかにつながるため、ボイスリーディングが作りやすいです。

左手がガイドトーンを押さえていれば、右手は多少外してもハーモニーが崩れにくくなります。

逆にガイドトーンが曖昧だと、テンションを足しても「濁っているだけ」に聞こえやすいです。

まずは3度と7度だけで進行を弾き、解決の気持ちよさを耳で確認する練習が有効です。

ルートレス

ルートレスは、左手からルートを外し、3度と7度にテンションを足してコンパクトにまとめる発想です。

ベースがいる編成では特に相性が良く、低音のぶつかりを避けながら厚みを出せます。

ルートを省いた分、9や13などの色を入れやすくなり、伴奏が一気にジャズらしく聞こえます。

形はキーごとに丸暗記するのではなく、音程の関係を理解して移動できるようにします。

まずはⅡ-Ⅴ-Ⅰで2種類の形を作り、交互に使うだけでも十分に効果が出ます。

進行 キーCの例 左手の目安
Ⅱm7 Dm7 F–C–E
Ⅴ7 G7 B–F–A
Ⅰmaj7 Cmaj7 E–B–D

テンションの配置

テンションは、常に足すものではなく、必要なときに必要な音だけを入れるのが実戦的です。

メロディの音とぶつかるテンションを入れると濁るので、右手の最高音を意識して選びます。

左手は音域が低いほど濁りやすいため、テンションは中音域に置くと輪郭が保てます。

9と13は比較的使いやすく、11は場面を選ぶので、最初は使い分けの理由を言えるようにします。

テンションの種類よりも、音数と音域の整理が先にできると、伴奏が急に聴きやすくなります。

定番進行でコード運用を固める

楽譜が置かれたアップライトピアノと窓辺の明るい部屋

ジャズピアノのコードは、単体で覚えるだけだと実戦で止まります。

進行の中で「前後関係」を体に入れると、次の和音へ自然に手が動くようになります。

ここでは、定番進行を少数に絞り、日々の練習に落とし込める形にします。

Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ

Ⅱ-Ⅴ-Ⅰは、緊張と解放が最も分かりやすい進行で、ジャズの土台として何度も出てきます。

最初はルートありの形で機能を確認し、次にシェル、最後にルートレスへ移行すると段階が作れます。

コードの形よりも、ガイドトーンが滑らかにつながるかを最優先にします。

テンションは固定せず、同じ進行でも音を変えて雰囲気が変わることを体験すると理解が深まります。

移調は半音ずつ回すと耳が鍛えられ、キーが変わっても迷いにくくなります。

  • ルートありで機能確認
  • シェルで最小化
  • ルートレスで色付け
  • 半音移調で定着
  • テンションは1音から

ジャズブルース

ブルースは、コードの形とリズムの両方をまとめて鍛えられる、最も実戦的な練習素材です。

同じ12小節が繰り返されるので、左手を安定させつつ、右手の反応を育てやすい利点があります。

最初はシンプルに7th中心で回し、慣れてきたらサスやディミニッシュで色を加えます。

ブルースの伴奏は「詰める」より「間を作る」ほうがグルーヴが出やすいです。

録音して聴き返すと、タイム感のズレが見えやすく、上達が加速します。

小節感 役割 狙い
1〜4 主調の提示 安定感
5〜6 サブドミナント 変化
7〜8 主調へ戻す 回帰
9〜12 ターンアラウンド 推進力

循環

循環は、コードがテンポ良く回る進行で、左手の移動とボイスリーディングの練習に向きます。

ルートを大きく飛ばすときほど、ガイドトーンを近くでつなぐと滑らかに聞こえます。

形の暗記より、次のコードの3度と7度がどこにあるかを先に目で追う癖が大切です。

循環をルートレスで回せるようになると、いろいろな曲に応用できる汎用性が生まれます。

最初はテンションを入れず、音域と音数を整えることを優先すると失速しません。

リハーモナイズ入門

リハーモナイズは、同じメロディでもコードを置き換えて雰囲気を変える発想です。

初心者は大きく変えようとせず、まずはドミナントの前にサスを置くなど小さな変更から始めます。

ディミニッシュを経過和音として挟むだけでも、流れが滑らかになり、ジャズらしい色が出ます。

置き換えの判断は理屈だけでなく、メロディとの相性と解決感で決めると破綻しにくいです。

元の進行に戻れる安全地帯を確保しながら試すと、練習が前向きに進みます。

コンピングを音楽にする

楽譜が置かれたアップライトピアノと窓辺の明るい部屋

ジャズピアノのコードは、形が正しくても、リズムと音数が整わないと伴奏として機能しません。

コンピングは「押さえる」より「置く」感覚が重要で、音の長さと間合いがグルーヴを作ります。

ここでは、実戦で迷わないためのリズム設計と、音数の考え方を整理します。

タイム感

スウィングの伴奏では、リズムが先に走ると焦って聞こえ、後ろに倒れるとだらけて聞こえます。

クリックに合わせるより、メトロノームの裏を感じながら「乗る」練習をすると安定しやすいです。

左手のコードが重いとタイムが固くなるので、まずは音数を減らしてリズムを守ります。

伴奏は常に同じ形で刻む必要はなく、フレーズの隙間に呼吸を合わせると自然になります。

タイム感が整うと、同じボイシングでも説得力が増し、音楽が前に進みます。

リズムパターン

コンピングのパターンは、複雑さよりも「繰り返しても飽きない間」を作ることが大切です。

最初は2拍目や4拍目に軽く入れるだけでも、スウィングの骨格が見えてきます。

パターンを増やす前に、同じパターンをどのキーでも崩さず出せることを優先します。

右手がメロディを弾くときは、左手のリズムを単純にして衝突を避けると聴きやすいです。

伴奏の役割は主役になることではなく、主役を気持ちよく見せることだと意識します。

狙い 置き方 効果
安定 2拍目中心 まとまり
推進 裏拍を混ぜる 前進感
余白 休符を増やす 呼吸
強調 短いスタブ アクセント

音数の設計

音数が多いほど豪華に聞こえると思いがちですが、ジャズでは少ない音のほうが濃く聞こえる場面が多いです。

特に左手は低音域の濁りが出やすいので、核の音だけを残して削る勇気が重要です。

音数を減らすと、自然にリズムが軽くなり、コンピングが躍動しやすくなります。

テンションは「入れる」より「選ぶ」ことでキャラクターが出るので、毎回同じ組み合わせにしない工夫が効きます。

迷ったら、3度と7度を残して他を削る判断が、最も安定して音楽的です。

  • 核は3度と7度
  • 低音域は音数を減らす
  • 5度は省略の候補
  • テンションは1音から
  • 余白を優先

アンサンブル

バンドでは、ベースやギター、ホーンの音域とぶつからないように配置を調整する必要があります。

左手を中音域に寄せると濁りが減り、他パートとの住み分けがしやすくなります。

ソロが始まったら音数を増やす、歌が入ったら引くなど、役割に応じた変化が大切です。

「弾かない時間」を恐れず、必要なところだけ置くと、むしろグルーヴが強くなります。

コードの知識は、最終的に音楽の会話に使える形へ変換してこそ価値が出ます。

コード練習を毎日に落とすコツ

アップライトピアノの内部構造とハンマーアクション

ジャズピアノのコードは、型を覚えた瞬間より、進行の中で止まらずに使えた瞬間に身につきます。

最初の1週間は、7つの基本型をキーCで固定し、左手の形と耳の一致を優先します。

次の段階で、Ⅱ-Ⅴ-Ⅰだけをシェルとルートレスで回し、半音移調で体に刻みます。

テンションは増やすより、9か13のどちらか1音だけを選んで安定させるほうが上達が速いです。

コンピングはパターン収集より、音数を減らしてタイム感を守る練習が効果的です。

録音して聴き返すと、濁りや置き方の癖が見えるので、改善点が具体的になります。

譜面で読めたコードでも、耳で機能が聞こえないと実戦で迷うため、必ず進行の解決感を確認します。

1日10分でも、同じ素材を丁寧に回すほうが、気分で飛び回る練習より定着します。

今日からは、基本型の反復と進行練習を軸にして、少ない材料で深く掘る流れを作ってください。

その積み重ねが、ジャズピアノのコードを「知識」から「音楽」へ変えていきます。