Em9は、ただのマイナーコードを一気に“空気のある響き”へ変える便利なコードです。
一方で、同じ鍵盤を押しているのに濁って聞こえたり、音が多くて指が迷ったりしやすいのも事実です。
ポイントは、構成音を理解したうえで、音域と省略のルールを決めて弾くことです。
この記事では、ピアノでEm9をきれいに鳴らすための押さえ方を具体例から整理します。
右手と左手の分担、ルート省略、よく使う進行まで一緒に押さえて、実戦で使える形に仕上げます。
ピアノでEm9を気持ちよく鳴らす7つの押さえ方
Em9は音が5つあるので、全部を同時に鳴らすよりも「響きの芯が出る形」を選ぶほうが安定します。
ここでは、実際の演奏で使いやすい代表的なボイシングを7つに絞り、迷わず再現できるように整理します。
基本形
まずは構成音をそのまま積んで、Em9のキャラクターを耳に刻みます。
押さえにくい場合は、上の音を少し広げて間隔を作ると濁りが減ります。
慣れるまではゆっくり分散して弾き、同じ響きに着地できるようにします。
| ボイシング名 | 基本形 |
|---|---|
| 構成音 | E G B D F# |
| 左手 | E G |
| 右手 | B D F# |
| コツ | 音域を広げる |
| 向く場面 | 確認用 |
| 難易度 | 中 |
開放形
Em9の濁りやすさは、近い音が同じあたりに固まることで起きがちです。
そこで左手を低め、右手を高めに置き、上下に分けて空間を作ります。
響きが立体的になり、ペダルを薄く踏んでも広がりやすくなります。
| ボイシング名 | 開放形 |
|---|---|
| 構成音 | E G B D F# |
| 左手 | E B |
| 右手 | G D F# |
| コツ | 上下に分ける |
| 向く場面 | バラード |
| 難易度 | 中 |
ルート省略形
バンドや伴奏では、低音のルートが別パートで鳴っていることが多いです。
その場合はルートを外し、響きの色を決める音だけを残すと洗練されます。
Em9ならEを省略してもEm9らしさが残り、軽く鳴らせます。
| ボイシング名 | ルート省略形 |
|---|---|
| 構成音 | G B D F# |
| 左手 | G D |
| 右手 | B F# |
| コツ | 低音を軽く |
| 向く場面 | アンサンブル |
| 難易度 | 低 |
Gmaj7型
Em9のルートを省略すると、残る音がGmaj7と同じ並びになります。
つまり、右手でGmaj7の形を作るだけでEm9の“上物”が作れます。
左手は状況に応じてEかBを足し、土台を整えるのが扱いやすいです。
| ボイシング名 | Gmaj7型 |
|---|---|
| 構成音 | G B D F# |
| 左手 | E |
| 右手 | G B D F# |
| コツ | 右手を形で覚える |
| 向く場面 | 即興 |
| 難易度 | 中 |
低音控えめ形
Em9は低音を厚くしすぎると、音がぶつかってモヤっとしやすいです。
左手はルートだけ、またはルートと5度だけにして、濁りの原因を減らします。
右手で3度と7度と9度を中心に鳴らすと、輪郭が前に出ます。
| ボイシング名 | 低音控えめ形 |
|---|---|
| 構成音 | E B G D F# |
| 左手 | E B |
| 右手 | G D F# |
| コツ | 左手を薄く |
| 向く場面 | 伴奏 |
| 難易度 | 低 |
分散和音形
同時に押さえるのが難しいなら、音を時間で分けて鳴らすのも立派な解決策です。
アルペジオでE→G→B→D→F#の順に置くだけでも、十分にEm9を感じられます。
拍の頭でルートを鳴らし、残りを流すと安定感が出ます。
| ボイシング名 | 分散和音形 |
|---|---|
| 構成音 | E G B D F# |
| 左手 | E |
| 右手 | G B D F# |
| コツ | 時間で分ける |
| 向く場面 | 弾き語り |
| 難易度 | 低 |
省略カスタム形
最後は「全部入れない」前提で、自分の手に合う形を作る方法です。
Em9の色は3度Gと7度Dと9度F#で決まりやすいので、そこを優先します。
5度Bは省略しても成立しやすく、音数を減らすとミスが減ります。
| ボイシング名 | 省略カスタム形 |
|---|---|
| 構成音 | E G D F# |
| 左手 | E |
| 右手 | G D F# |
| コツ | 色の音を優先 |
| 向く場面 | 実戦全般 |
| 難易度 | 低 |
Em9の正体が一瞬でつかめる
押さえ方を丸暗記すると、キーが変わった瞬間に崩れやすくなります。
Em9の中身をシンプルに理解しておくと、どの形を選べばいいかが自分で判断できるようになります。
構成音
Em9は、Eマイナーに短7度と長9度を足した拡張コードです。
音名で覚えるだけでなく、度数で捉えると移調に強くなります。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| ルート | E |
| 短3度 | G |
| 5度 | B |
| 短7度 | D |
| 長9度 | F# |
この5音のうち、実戦では全部を同時に鳴らさない前提で組み立てます。
テンションの距離感
9度は、ルートから見て2度を1オクターブ上に置いた音で、近い音ほど濁りやすい性質があります。
Em9の場合は短3度Gと9度F#が半音で隣り合うので、同じ音域に固めると濁りの原因になります。
- 9度は高めに置く
- 3度は真ん中に置く
- 低音は薄くする
- 同音域に詰めない
この距離感を守るだけで、同じEm9でも一気にクリアに聞こえます。
ルート省略
ピアノは低音を強く鳴らしやすい楽器なので、ルートを入れすぎると全体が重くなりがちです。
とくに左手が忙しい場面では、ルートを外してもEm9の色は成立します。
- 色の中心はG D F#
- 5度Bは省略候補
- ルートは状況で足す
- ベースがいるなら外す
省略を怖がらずに、響きが整う方向を優先するのがコツです。
表記の迷い
Em9は、Em7に9度を足したものとして扱われることが多い表記です。
譜面によってはEm7(9)のように、7度を明示して書かれることもあります。
| 表記 | 捉え方 |
|---|---|
| Em9 | Em7に9度を追加 |
| Em7(9) | 同じ内容を明示 |
| Emadd9 | 7度なしの追加 |
| Em9省略 | 状況で音を抜く |
記号の違いを理解しておくと、必要な音だけを自分で選べるようになります。
指が迷わないフォーム設計
Em9を安定して鳴らすには、手の形を固定して再現性を上げるのが近道です。
ここでは右手と左手の役割を決め、押さえ方の設計ルールとして整理します。
右手の形
右手は、色を決める3度と7度と9度を中心に置くと、Em9らしさが残りやすいです。
まずはG D F#の3音を基準にして、必要ならBを足す設計にします。
- 基本はG D F#
- 余裕があればBを追加
- 高音側に寄せる
- 同音域に詰めない
右手が安定すると、左手を変えても全体が崩れにくくなります。
左手の低音
左手は土台の役割なので、厚くしすぎないことが重要です。
Em9は低音を増やすほど濁りやすいので、まずはルートEだけでも十分です。
| 左手の選択 | 狙い |
|---|---|
| Eのみ | 軽い土台 |
| E B | 安定感 |
| G D | ルート省略 |
| E G | マイナー感 |
左手を薄くして、右手の色が見える状態を作るときれいに聞こえます。
音域の選び方
同じボイシングでも、低すぎる音域に置くと急に濁って聞こえることがあります。
特にテンションは高めに置き、真ん中の音域を空ける意識が効果的です。
- テンションは高め
- 左手は低音寄り
- 中央を詰めない
- 響きで微調整
耳で濁りを感じたら、まずテンションの位置を上げるのが簡単です。
指番号の考え方
フォームが崩れる原因は、指が毎回違う場所に迷い込むことです。
音数を減らした形を基準にして、足す音は同じ指で足すルールにします。
| 方針 | 例 |
|---|---|
| 基準を3音にする | 右手G D F# |
| 追加音を固定 | Bを同じ指で追加 |
| 移動を最小化 | 形を保つ |
| 無理な開きを避ける | 音を省略 |
指番号よりも、形の再現性を優先すると実戦で強くなります。
コード進行でEm9を生かす
Em9は単体で鳴らしても気持ちいいですが、進行の中で置くと“切なさ”や“透明感”がはっきり出ます。
よくある進行パターンを知っておくと、曲作りや伴奏で迷いにくくなります。
定番進行
マイナー系の進行では、Em7の代わりにEm9を置くだけで一段おしゃれになります。
まずは同じ機能のまま差し替える感覚で使うと自然です。
| パターン | 例 |
|---|---|
| トニック系 | Em9→Cmaj7 |
| 循環 | Em9→A7→Dm7→G7 |
| 下降 | Em9→D→C |
| 繰り返し | Em9→Em9 |
最初は進行を増やしすぎず、置き換えだけで響きを体に入れます。
バラードの置き方
バラードでは、Em9を長めに伸ばすだけで空気感が出ます。
低音を控えめにし、右手を高音寄りに置くと“歌うコード”になります。
- 音を伸ばす
- 右手を高め
- 左手は薄く
- ペダルは浅く
響きを広げたいときほど、音数を増やすより音域を広げるほうが効果的です。
ジャズの裏口
ジャズやネオソウル寄りの伴奏では、ルートを外したボイシングがよく使われます。
Em9はGmaj7型で覚えると、右手の形がすぐ作れて実用性が高いです。
- ルートを外す
- 3度と7度を中心
- テンションを高め
- 短く刻む
ベースがいる想定で組むと、コードの透明度が上がります。
作曲での使い分け
Em9は“暗さ”よりも“余韻”が前に出るので、場面に合わせて使い分けると効果的です。
同じEマイナー系でも、EmやEm7より柔らかく聞かせたいときに向きます。
| コード | 印象 |
|---|---|
| Em | 素直 |
| Em7 | 少し都会的 |
| Em9 | 余韻が深い |
| Emadd9 | 軽い透明感 |
印象で選べるようになると、コード選びが速くなります。
濁りを消す調整術
Em9は魅力が強い反面、置き方を間違えると一気にモヤついて聞こえます。
ここでは、よくある原因を先に潰して、きれいに鳴る確率を上げる調整術をまとめます。
半音衝突
Em9は3度Gと9度F#が近いので、同じ音域に集まると衝突が起きやすいです。
この衝突自体は悪ではありませんが、狙っていないなら音域を離すのが簡単です。
- 9度を上げる
- 3度を真ん中
- 右手を高め
- 同時押しを避ける
まずテンションを上げるだけで、濁りが一気に減ることが多いです。
低音の濁り
左手でEとGとDまで入れると、低音域の情報量が多くなり、輪郭が埋もれがちです。
低音はルート中心にして、色は右手に任せる設計にします。
| 症状 | 対処 |
|---|---|
| モヤっとする | 左手を減らす |
| 重たく聞こえる | ルートのみ |
| コード感が薄い | 右手に7度 |
| 響きが硬い | 音域を広げる |
低音を薄くするほど、Em9の“空気”が前に出やすくなります。
ペダルの踏み方
ペダルを深く踏むほど気持ちよく聞こえると思いがちですが、Em9は濁りも一緒に伸びます。
コードが変わる瞬間で軽く踏み替え、残したい響きだけを残す意識が重要です。
- 踏み替えを早め
- 深く踏みすぎない
- 低音を残しすぎない
- 右手の響きを優先
ペダルは“響きを足す”より“響きを整える”感覚で扱うと安定します。
バンドでの役割
他の楽器がいるときは、ピアノが全部の音を抱え込む必要はありません。
むしろピアノは色を作る担当として、3度と7度と9度を中心に置くと混ざりやすいです。
| 状況 | 優先 |
|---|---|
| ベースあり | ルート省略 |
| ギター多め | 音数を減らす |
| 歌が主役 | 高音を控える |
| 間奏で前に出る | 開放形 |
役割を決めると、Em9が濁らずに“おしゃれなまま”響きます。
Em9を自分の武器にするコツ
Em9は構成音を知って、音域を広げ、必要なら省略するだけで一気に扱いやすくなります。
最初は基本形で響きを確認し、次に開放形で濁りを減らし、最後にルート省略形で実戦に寄せる流れが最短です。
右手はG D F#を基準にして形で覚えると、キーが変わっても再現しやすくなります。
左手は厚くしすぎず、土台を最小限にして色を前に出す設計が安定します。
進行の中ではEm7の置き換えから始めると自然に耳に馴染みます。
濁ったらテンションの位置を上げ、低音を減らし、ペダルを浅くする順で調整すると立て直しやすいです。
このルールを固定すれば、Em9は「難しいコード」ではなく「気持ちよく鳴る定番コード」になります。

