調整作業は人間の定期健康診断と同じようなもので、ピアノの寿命を長く保ち、良い状態の弾き心地を保つ為にも大切です。
異常個所が見つかれば早期に対処が出来ますので余分な費用が掛かりません。
調律、調整作業、修理に関しては、必ずスタインウェイ社の正規技術訓練を受けた弊社技術者にご依頼ください。
ピアノは主に木材、金属、鋳鉄、フェルト、クロス、皮革等の部品で構成されています。
特に木材、フェルト、クロス、皮革部品は温度、湿度に対して変化し易く、
様々な調整を行うアクションメカニック(打弦機構)はこれらの自然な素材で成り立っています。
アクションの調整バランスが変化し乱れてくると、演奏者の微妙なタッチの違いを、
明確な音量や音色の違いとして的確に表現することのできる演奏上の機能性が失われていきます。
また、音律についても、温度、湿度変化の大きさに比例してバランスが崩れ、変化していきます。これらの変化を最小限に防ぐには、ご家庭ではピアノをエアコンや除湿機、加湿機を活用して頂き、お部屋の中の温度・湿度の環境管理を一定の条件に保つことが、出来るようにしていただくのが理想です。
理想的な湿度は50%±10%、温度は20℃±5℃です。これはピアノに使用されている部材が、音の響やアクションメカニックの優れた性能を発揮する為に必要な木材の平衡含水率、約10%を維持するための条件です。
(※平衡含水率とは・・・木材中の水分の量が周辺の空気の温度・湿度の影響に応じて変化した後、平衡状態に達したときの含水率)
スタインウェイピアノは製造された後、工場においてシーズニングを経て出荷されていますが、新しいうちはアクションメカニック(打弦機構)や鍵盤の動きが堅く感じられる演奏者もおられます。
スタインウェイピアノは、長い年月使用して頂くことを前提としている為、アクション機構等に堅さを持たせております。それらを馴染ませるために、納入後の慣らし弾きをお奨め致します。
慣らし弾きの奏者は、ピアノ演奏についての専門の知識と技能を有する方に、全音域をむらなく弾いて頂くことが理想ですが、お子様がお弾きになる場合でも同じく、低音から高音までむらなく弾いていただき、年に数回の調律を実施することで、ピアノの演奏機能をよりよいバランスに仕上げていくことが出来ます。
通常の調律業務においては、音律調整を行うことが主要な作業で、所要時間は約2時間です。
調律時にもアクションの調整を出来るだけ高い精度に仕上げるように行いますが、より精密な、しかも細部にわたる調整作業には、さらに多くの時間が必要です。そのために、特に頻繁に使用される方のピアノは、アクションの調整を3~5年間に1回は行い、そのピアノの状態によって1日~2日の時間をかけ、工場より出荷された時に理想とされた基本寸法に照らし合わせて調整し直すことが非常に大切です。
この調整作業がピアノの寿命をさらに長くしますので、実施して頂くためのご予算をご予定下さい。
『ピアノ弦の張力を調節して音階を作る作業』です。
鍵盤が弾かれて弦が鳴らされたときに230本余りの弦が音楽の法則にかなった正しい音階を出すようにさせる作業のことです。
鍵盤が弾かれアクション(内部機構)を通してハンマー(打弦機構)が弦に当たり発音し、また、発音した音をダンパー(消音機構)がとめるまでの一連の動作を演奏機能上必要とされる状態に整える作業です。
製造の時に理想とされた寸法に合わせていくことが基本です。
優れたピアニストは微細な寸法のずれを的確に感じます。
ピアニストの微細な指先の動きやペダリングを僅かなロスも無く正確に演奏に表現できるようにする調整作業を整調と言います。
主にハンマーフェルトの部分に施す作業を整音と呼んでいますが、スタインウェイピアノの持つ音色を一番直接的に変化させ、最終的に決定する作業です。
ピアノの音色は調律や整調でも様々変わり、整音作業の前に調律と整調作業を可能な限り高いレベルと精度で揃えておくことが重要です。
整音によってピアノの音の性格が与えられ、その楽器の音の特質が決定されるので、技術者にとっては、調律/整調/その他全ての作業バランスと統一性を判断する能力と経験、音感性が問われます。
演奏者が求める音が限りなくあるだけに、演奏者との対応も含めると繊細で緻密な感覚を要求される作業です。